【2024年最新版 育児・介護休業法】順次施行される内容をわかりやすく解説
目次
育児・介護休業法とは?2022年なにが変わった?
育児・介護休業法とは、育児や介護と仕事の両立を達成するために、労働者の雇用確保や就業支援を目的として1991年に制定された法律です。具体的には、育児休業や介護休業の取得、仕事との両立のために企業がおこなう措置などが定められています。2022年の法改正では、育児・介護休業の取得がしやすくなること、男性の休業取得を促進させることがポイントとなっています。
育児・介護休業法改正の背景
出産・育児により退職する従業員の割合が一定数存在する
育児・介護休業法の改正が実施される背景としては、仕事と育児の両立ができないことを理由に退職する人が一定数いる点が挙げられます。厚生労働省の「育児・介護休業法の改正について」によると、出産後にも就業を継続している女性は約半数しかいません。退職する理由としては、体力的に両立が難しい、勤務先に支援してくれる雰囲気がない、制度があっても利用できそうにないなどがあります。
男性の育児休業取得率が女性と比べ伸び悩んでいる
女性が配偶者の協力を得られていないことも問題視されています。男性の育児休業取得率は毎年上昇傾向にあるものの、令和3年度は13.97%となっており、女性の85.1%に比べて低い水準が続いている状況です。政府としては制度改正を期に、令和7年までに30%まで引き上げたい狙いがあります。また、育児休業も女性が6ヶ月以上取得しているのに対して、男性は2週間未満の取得が多く、現実的な支援を受けることができていません。
育児・介護休業法改正施行スケジュール
施行タイミング | 施行内容 |
2022年4月 | 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務化 |
育児休業の周知・取得意向の確認を義務化 | |
有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件を緩和 | |
2022年10月 | 産後パパ育休(出生時育児休業)を創設 |
育児休業の分割取得が可能 | |
育休取得期間の幅が広がる | |
2023年4月 | 育児休業取得状況の公表を義務化 |
【2022年4月施行】育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務化
育児休業を従業員の誰もが気兼ねせず取得できるように、雇用主である企業は環境を整備することが義務となりました。具体的には、管理職向けに育児休業に関する研修を実施すること、従業員が相談・申請しやすいように専用の窓口を設けること、事例の収集と共有などがあります。
【2022年4月施行】育児休業の周知・取得意向の確認を義務化
従業員が企業に出産の申し出をした場合、企業は自社の育児休業についての情報を説明するとともに、取得の意向を個別に確認することが義務化されました。説明する内容としては、育児休業・産後パパ育休についての制度や給付など、意向確認については面談やメールでおこないます。
【2022年4月施行】有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件を緩和
以前は1年以上の雇用期間が制度利用の条件とされていましたが、撤廃され入社間もない従業員でも取得できるようになりました。育児休業の場合は子が1歳6ヶ月までに契約が満了しないこと、介護休業の場合は休業開始から93日経過後に6ヶ月以内に契約満了しないことが条件となります。
【2022年10月施行】産後パパ育休(出生時育児休業)を創設
男性の育児休業の取得を促進するために、より柔軟な対応ができる制度が新たに創設されました。現行のパパ育休と組み合わせた利用も可能です。産後パパ育休は休業の2週間前までに申請すれば取得することができ、状況に合わせて分割して取得することも可能になります。
【2022年10月施行】育児休業の分割取得が可能
現行の制度では開始時期が決められていて、延長すると仕事にブランクが発生してしまうことがありました。しかし新たな制度では分割して育児休業を取得できるようになったため、妻と交代で育児休業を取得するなどして、仕事と育児の両立ができるようになりました。
【2022年10月施行】育休取得期間の幅が広がる
産後パパ育休は生後8週間のうちに4週間取得できるため、出生時と帰宅療養時など、助けが必要なタイミングに合わせて育休を取得できます。また、分割取得ができるようになったため、休業スタートのタイミングを調整しながら妻と交代で休むことも可能です。
【2023年4月施行】育児休業取得状況の公表を義務化
従業員1,000人を超える企業に限定はされますが、年に1回休業取得状況を公表することが義務化されました。男性の休業取得の状況、もしくは育児休業含め育児を目的とする休暇の取得割合をインターネット上などで公表する必要があります。
育児・介護休業法改正で企業担当者が知っておくべきポイント
出生時育児休業給付金の支給
出生時育児休業給付金の申請は、子どもが出生した日から8週間を経過した翌日から可能になります。期限は申請開始日から2ヶ月が経過した日付の月末までになるため、計画的に手続きを進めるようにしましょう。詳しい条件や給付額の算出方法については、厚生労働省の「育児休業給付の内容と支給申請手続」をご覧ください。
社会保険料の免除要件の変更
改正前は、育児休業の期間が月末日に重なっていればその月の保険料が免除されていました。改正後においては、育児休業の期間が月末日に重なっていなくても、その月に14日以上の育児休業を取得していれば、保険料が免除されるようになります。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和の対応は?
有期雇用労働者の休業取得の要件は、改正後に子どもが1歳6カ月になるまでに契約が満了しないことのみになりました。契約更新について、申請の時点で企業が更新しない旨を通知していなければ、「更新しない」と判断することはできません。厚生労働省の「有期雇用労働者について」にて詳しい条件をご確認ください。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と育児休業の分割取得についての対応は?
新制度の成立で、両親はこれまで以上に柔軟に育児休業を取得できるようになりました。しかし、子どもの状況によって取得方法の最適解は異なります。取得経験のある従業員にヒアリングをするなど、これから取得をする従業員の参考になるような情報を収集することが大切です。
育児・介護休業法改正まとめ
育児・介護休業法の改正について解説しました。共働きが当たり前になっている現代において、育児や介護も夫婦で協力しなければ、仕事と育児の両立はできません。貴重な人材が長く働き続けるためには、まず企業が制度に則って取得手続きをおこなうのはもちろんのこと、会社として制度を理解し取得しやすい雰囲気も作っていく必要があります。